HD H.264/MPEG-2 マルチフォーマットエンコーダ、およびデコーダモジュールを開発
2008年4月2日
小型・高性能な放送市場向け4:2:2対応コーデック製品の実現を可能に!
NTTエレクトロニクス株式会社(以下NTTエレクトロニクス)はH.264(注1)と MPEG-2(注2)両対応のHDTVエンコーダモジュール「SC50KE」、およびHDTVデコーダモジュール「SC50KD」を開発しました。
本製品は放送業界において高い実績を誇るMPEG-2 HDTV対応シングルチップコーデックLSI「VASA」(注3)の高画質を継承し、新開発H.264/MPEG-2エンコーダLSI「SARAENC」、および、デコーダLSI「SARADEC」(注4)を中心に、それぞれ周辺デバイス、高速メモリーを搭載したモジュールです。シンプルな機器構成でありながらプロが求める高画質を実現します。
高画質が要求される放送設備分野においては、より小型で効率の良い機器構成を実現するために、H.264、4:2:2クロマ対応のコーデック製品が待ち望まれていました。また一方では現在主流であるMPEG-2方式への対応も要求されます。本製品は、これらの市場要求に応えられる世界で唯一のマルチフォーマットエンコーダ、およびデコーダモジュールで、モジュール上には、それぞれエンコーダLSI、またはデコーダLSIと周辺デバイス、高速メモリーが搭載されています。これらにより各種放送機器の小型化、高性能化に寄与するとともに、開発期間の短縮にも貢献します。
NTTエレクトロニクスは、今後本製品の量産化に向けたステップに移行し、08年4月より受注生産を開始いたします。
尚、4月14日~17日に開催されるNAB2008展示会(Las Vegas Convention Center)(注5)に出展する予定です。
左:HDTVデコーダモジュール「SC50KD」
右:HDTVエンコーダモジュール「SC50KE」
開発の背景
現在各国の放送局におけるデジタルハイビジョン化の波により、広く普及しているMPEG-2フォーマットから更に圧縮効率の高いH.264フォーマットへの移行が進み、両フォーマット、およびSD/HDに対応したLSIの需要が増大しています。
また、映像素材を扱う編集設備や素材伝送においては高ビットレートで原画に忠実な映像圧縮が望まれています。一方、限りある帯域の中で複数の映像・音声を伝送する必要のある送出設備においては、低ビットレートで画質劣化を極限まで抑える必要があります。
このような背景をふまえ、MPEG-2とH.264両フォーマットかつSDからHDに対応し、幅広いビットレートに適応した柔軟性のあるコーデックLSI製品が求められていました。
当社ではこれらの市場要求に応えるため、「VASA」開発において培ってきた技術を活かし、新たにフィールド/フレームアダプティブ符号化に対応(注6)する等の最新の高画質化アーキテクチャを搭載し、世界で唯一のマルチフォーマットエンコーダLSIである「SARAENC」、およびデコーダLSIである「SARADEC」を開発しました。更に6~40Mbps(H.264)と幅広いビットレートに対応することにより、お客様の多様化するニーズにお応えしています。
本製品はこのLSIと周辺デバイス、および高速メモリーを搭載したモジュールです。各種放送機器の小型化、高性能化に寄与すると共に、開発期間の短縮にも貢献します。
また、「SC50KE」モジュール、および「SC50KD」モジュールを組み合わせることにより、符号化情報の継承機能を備えたMPEG-2からH.264またはH.264からMPEG-2への高画質トランスコードも可能になります。
当社では、これまで放送用コーデックLSI・装置の高性能化に努め、世界で初めて製品化に成功したHDTV対応シングルチップコーデックLSI(VASA等)を始めとする高度な設計技術を蓄積し、日本を始めとして世界の放送市場で高く評価されています。
豊富な経験と熟練された技術により、あらゆるお客様のご要望に合わせて柔軟なカスタマイズに対応できます。
SC50KE/SC50KDの特徴と用途
- 新開発のH.264/MPEG-2エンコーダLSI「SARAENC」、およびデコーダLSI「SARADEC」搭載
H.264/MPEG-2両フォーマットに対応し、現在主流であるMPEG-2から今後需要が拡大するH.264への移行をスムーズにします。 - H.264/MPEG-2共に4: 2: 2クロマに対応
映像素材を扱うビデオサーバーや素材伝送等のアプリケーションへの適用が可能です。 - H.264/MPEG-2ビデオ、周辺機能、高速メモリーを搭載したモジュール
取り扱いが容易な一体型のモジュールに最新のLSIが搭載されており、高性能なエンコーダ、デコーダシステムを短期間で開発することが可能です。 - 音声入力(PES入力)を2ポートとユーザーデータ入力(PES入力)を3ポート装備
エンコーダモジュールは、音声とユーザーデータが外部PES入力となっており、音声の多チャンネル化と字幕や制御信号等の多様なユーザーデータの入力が可能になります。 - 主な用途
SNG(注7)、FPU(注8)等の素材伝送機器、およびビデオサーバーなどのプロフェッショナル映像機器に適用可能です。
今後の展開
更なる低遅延化(100msec)への対応、およびクレジットカードサイズのSDモジュールを開発予定です。
用語の説明
- 注1
- H.264
2004年にITU-T(国際電気通信連合・電気通信標準化セクタ)とISO(国際標準化機構)とにより共同で標準化された、映像コーデックの規格です。 MPEG4 AVCとも呼ばれています。MPEG-2の2倍以上の高いデータ圧縮率を実現できるとされています。(本文へ戻る) - 注2
- MPEG-2(Moving Picture Experts Group-2)
MPEGは動画像圧縮に関する国際標準方式。そのうちMPEG-2は、ハイビジョンを含むテレビ映像など高品質な映像の標準符号化方式で、DVDやデジタルテレビ放送にも適用されています。(本文へ戻る) - 注3
- VASA(Versatile and Advanced Signal processing Architectureの略)
MPEG-2国際標準に準拠した素材伝送向けHDTV CODEC LSIのNTTの開発コード名です。世界で初めて1チップ化を実現したMPEG-2 HDTV CODEC LSIです。(本文へ戻る) - 注4
- SARAENC、SARADEC
「SARA(Super Advanced Real-time CODEC Architecture for H.264 professional implementations)」。1チップでSDTV相当の、マルチチップでHDTV相当のエンコード/伝送処理が可能です。(本文へ戻る) - 注5
- NAB2008
NAB2008:世界最大級の規模を誇る放送・映像の国際展示会。(本文へ戻る) - 注6
- フィールド/フレームアダプティブ
SARAはMBAFF(macroblock-adaptive frame/field)およびPAFF(Picture-adaptive frame/field)両方の符号化に対応し、高い符号化効率を実現しました。(本文へ戻る) - 注7
- SNG
Satellite News Gathering(本文へ戻る) - 注8
- FPU
Field Pick up Units(本文へ戻る)