NTTエレクトロニクス社、20nm低電力コヒーレントDSPを世界初出荷
- 最先端CMOS 半導体LSIで100Gコヒーレントプラガブル光トランシーバを実現 -
2014年9月22日
NTTエレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:萩本 和男、本社:神奈川県横浜市、以下 NEL)は、データセンタ間トラヒックの急伸を支える100G 波長多重(WDM)光ファイバ通信システムの本格普及に向けて、業界初となる20nm 100G低電力デジタルコヒーレント信号処理LSI(以下100G LP-DSP)のサンプル出荷を開始しました。1波長あたり毎秒100ギガビット(100Gbps)の長距離光ファイバ通信を実現するデジタルコヒーレント信号処理(DSP)機能に、送信側デジタル・アナログ変換(DAC)や波形整形、100ギガビットEthernet(100GE)インタフェースの機能を加えてワンチップ化しました。米国Broadcom社との提携により業界最先端の20nm CMOSアナログ・デジタル混在(ミックスト・シグナル)IC設計技術を光通信ASSP(特定用途向け汎用ICチップ)に世界初適用し、既存ソリューション(40nm 3チップ構成)での消費電力や実装面積を70%も削減します。本製品により、プラガブルなCFP型コヒーレント光トランシーバ実装や100Gマルチポート実装が可能となり、通信ネットワークのさらなる帯域拡大や柔軟性向上に貢献します。
NELでは、本LP-DSPをはじめとして、1チップ高機能100G OTNフレーマ、集積光受信モジュール(ICR)や小型集積波長可変光源(μITLA)などのコヒーレント光トランシーバ向け光コンポーネントの製品ラインナップを、フランス カンヌで開催されるECOC2014(2014年9月22日~24日)に出展いたします。
なお、本製品には、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に基づく、技術研究組合 光電子融合基盤技術研究所(PETRA)の研究開発により得られた成果が用いられています。
製品化の背景
2012年に販売開始したNEL100G DSP( ※1 )は、当時最先端の40nm CMOSプロセス技術を採用して100G コヒーレントDSP( ※2 )という新市場を開拓し、現在に至るまで業界をリードしています。一方、データセンタのクラウド化が進展するなかで、長距離光通信向けのコヒーレントDSP技術をメトロネットワークやデータセンタ間向けなど用途に応じて差し替えられるプラガブル・トランシーバ形態で利用する期待が高まっています。そのためにはDSP及びその周辺回路の抜本的な低消費電力化が必要です。
製品の特長
今回、サンプル出荷を開始した100G LP-DSPは、実績のあるコヒーレントDSP機能に加えて、送信側DACや波形整形、NTT研究所が開発した伝送路推定やOTNフレーマ( ※3 )などの諸機能をワンチップに集積しており、プラガブル・コネクタにおける電気信号歪の補償、波長多重光信号の高密度配列、100GEデータセンタ間通信ソリューションへの適用が可能です。また、光ファイバ分散補償( ※4 )や符号誤り訂正などの能力を選択的に選べる電力最適化に対応しており、最小電力の80km ZR用途( ※5 )、省電力な600~1,200kmメトロネットワーク用途、高性能な2,000km超のコアネットワーク用途など幅広いソリューションを提供します。
本製品には、米国Broadcom社との提携( ※6 )による業界最先端の20nm CMOS アナログ・デジタル混在(ミックスト・シグナル)IC設計技術を、光通信ASSPとしては世界で初めて適用しています。40nm CMOS製品による既存ソリューション(3チップ構成)に比べて、消費電力や実装面積を70%も削減することに成功しました。
製品の概要
主な特徴
- 低消費電力:コア20W以下
- コンパクト:パッケージサイズ 31mm × 31mm
- 広い適用先:プラガブルなCFP型コヒーレント光トランシーバでデータセンタ間通信にも対応
販売時期と価格
- 販売時期:サンプル出荷中
- 価格:納期・数量により変わるため、個別見積となります
今後の予定
NTTエレクトロニクスでは、Broadcom社との提携を通して今後も業界最先端の高速光通信ASSPラインナップを拡充していきます。
本記事に関する補足情報
用語解説
- ※1
- NEL100G DSP (NLD0629)
「低消費電力100G用デジタルコヒーレントDSP-LSIを製造・販売開始」 2012年2月29日 報道発表
https://www.ntt-innovative-devices.com/new/information/2012_02_29.html
本製品は、同様に40nm製品である100GEフレーマ(NEL NLD0632など)や送信MUX IC(Broadcom BCM84128など)と組み合わされて、国内外のモジュールサプライヤやシステムサプライヤを通して世界各地で100G光伝送システムに導入され、急増するデータ通信需要を支えている。 - ※2
- 100GコヒーレントDSP
1波長で100Gbpsを遠方まで運ぶためのキーデバイス。偏波多重された高速光信号をコヒーレント検波する際に、分散補償(※5)や符号誤り訂正などのデジタル電気信号処理を駆使して、ファイバ伝搬で歪んだ信号波形から正しい信号データを復元する。 - ※3
- OTNフレーマ
100GEなどのクライアント信号を、誤り訂正機能をもつ光転送ネットワークOTNの信号フレーム形式に変換するASSP。ここでOTNとは、Optical Transport Network の略で、国際電気通信連合ITUで標準化されている大容量・長距離光伝送システム向けのインタフェース規格のこと。 - ※4
- 光ファイバ分散補償
波長により、光ファイバ中に伝わる光の速さが異なるため、長距離伝送すると波形が崩れてしまう。その崩れてしまった光信号の波形を復元する。 - ※5
- ZR用途
IEEE802.3ae 10GE規格はシングルモード光ファイバ向けに10km まで届く10G BASE-LR、30~40km まで届く10G BASE-ERの2種類を規定しているが、データセンタ間など40km超の光ファイバ区間向けにレーザや受光器を強化して80km まで届く独自製品が10G BASE-ZRとしてデファクト化されている。これに由来し、おおむね80km までの適用領域をZR用途と呼ぶ。 - ※6
- 米国Broadcom社との提携
「NTTエレクトロニクスとブロードコム社、次世代コヒーレントDSPでビジネス提携」 2013年3月19日 報道発表
<本件に関するお問い合わせ先>
NTTエレクトロニクス株式会社
営業本部 関谷
E-mail:bc-dsp@ntt-el.com